京都の会だより

2020年9月号
9月1日更新


★京都の会追加行事決定!

愛宕山登山
11月14日(土)午前9時
清滝の登山口集合(雨天中止)
当日飛び入り参加OK
9時過ぎには出発します。
遅れた場合はがんばって追いかけてください^^。

次回11月更新の便りで詳細を掲載します。





練功状況

With新コロナウイルスの中、京都の会は以下の状況で練功を行なっています。

◎小松原練功会・・・ できるだけ組んでの練習はせず、適当に間隔をあけて形と体操をメインに行なっています。 
◎道枢葆光庵(物部道場)・・・ 窓を開けて換気をし、練功の際は全員マスク着用して活動しています。
◎西京極練功会・・・ コロナ第二波が収束傾向に向かえば、再開します。最初に手指消毒をして、全員がマスクを着用の上で練功を行なう予定です。



<コラム>木下代師範のつれづれ日誌

6月から小松原道場&北大路道場も平常練功開始しました。
ただ、当分の間、コロナの問題で様子見、どちらも週1のみの練功となります。
マスク姿での練功は、慣れない・暑苦しいなど問題を抱えていますが、仕方ありません。

小松原道場にて、入江先生の実験コーナーで、興味深い小さな実験がありました。
被験者は正座をする、実験者は程々の力で、被験者の正面から押す、というところに、マスク有り無しで、同じ力で押した場合、どちらが崩れず安定しているかという実験。
面白いことに、マスク着用の時は、みなものの見事にあっさり崩れてしまうという結果となりました。

感染予防にマスクは有効ですが、身体の安定度からすると弱いとはどういうことか、無意識下で安心してスキが出来て守りに入りすぎてしまうから??!不思議です。



 

★塾生レポート(加藤・記)
Vol.4 一刀石

 酷暑日がつづく8月、いつも通り毎週の練功に励んでおりました。練功後、先生方と話をしていると「鬼滅の刃」の話題になりました。
ご存じの方は多いと思いますが、鬼滅の刃は吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)の描いた漫画で、大正時代を背景に人と鬼の戦いを描いた内容です。
平成28年に「週刊少年ジャンプ」で連載が始まり、平成31年4月のアニメ化がスタートし、人気が急上昇しました。

 私もアニメを見ましたが、主人公竈門炭治郎(かまどたんじろう)とその妹の禰豆子(ねずこ)の絆が印象的です。
特に鬼の下弦の伍である累(るい)との闘いでは炭治郎の刀が折れるも、禰豆子を守りたい一心で戦い、最後は禰豆子との連携(?)で累の首を取るシーンは印象的でした。

 さて、凛塾で話題になった「鬼滅の刃」の話は写真にある通り「一刀石」です。
アニメ中で炭治郎が師匠の鱗滝(うろこだき)に「もう教えることはない」と言い、巨大な岩の前で「この岩を斬れたら最終選別にいくのを許可する」と言い放ちました。
許可とは鬼を退治する「鬼殺隊(きさつたい)」の入隊選別のことです。
巨大の岩を斬る修行中、いきなり錆兎(さびと)が現れました。炭治郎は錆兎に鍛えてもらい、女性の真菰(まこも)に助言してもらいました。
結果、炭治郎は錆兎の太刀(たち)会いで見事に先手をとり、刀の切っ先が錆兎をとらえます。
すると、実際に切れたのは錆兎ではなく巨大な岩でした。錆兎は幻だったのです。
 炭治郎がこの巨大な岩を斬る話が、柳生宗厳(むねよし)が天狗だと思い斬りつけた一刀石の伝説と似ているのです。
柳生宗厳は入道してから柳生石舟斎(せきしゅうさい)とも呼ばれました(※2)。
ちなみに柳生宗厳の孫が柳生三厳(やぎゅうみつよし)、つまり柳生十兵衛です。

さて話戻って、この天狗だと思って切りつけた一刀石は奈良市柳生町の天石立神社の奥に実存します。
奈良市観光協会HPによれば「天石立神社の奥に、縦に真っ二つに割れた約7m四方の巨石がある。この辺りは昔、柳生家の修行地といわれ、柳生石舟斎が天狗だと思い斬りつけたのがこの岩だったという伝説が残る。」(※1)と書かれています。

凛塾で武道を習っていることもあり、これをきっかけに柳生について調べて行きたいと思います。次回から柳生家について研究した内容を掲載していきたいと思います。

(引用)
※1 一刀石
奈良市観光協会HPhttps://narashikanko.or.jp/modelcourse/yagyu/
※2柳生宗厳https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B3%E7%94%9F%E5%AE%97%E5%8E%B3



★連載企画第二十二回「入江師範(凛塾京都の会顧問相談役)レポート」

空手というのは女性性の強い武術である。
白鶴拳の創始者方七娘は武功が高いだけでなく、驚くほどの美貌を備えていた。両方の手が攻防自在に動く様子が白鶴が翼を広げた姿に似ているという。
槍術に期限を有する河北一帯の直進性の強い形意拳の剛直さと比較してみると、近距離での攻防自在性は女性の感性であることがわかる。
南拳の一派である詠春拳の創始者である方詠春も女性であり、この系譜は葉問、李小龍、ダン・イノサント、B.リチャードソンを通じて凛道空手に連なることは先にも述べたとおりである。

この系譜を学ぶ上で「形」は非常に重要である。
伝承されている形は非常に厳密である、安易に改変してはならない。指導者の下で何年もかけて正しく学ばなければならない。
同時に、ときには肉眼を閉じて、第三の目で観なければならない。
気の世界は物理的世界ではないので、計測したり、再現することはできない刹那滅の世界であり、般若の知恵をもって観なければならない。
そのため、心法の修行も欠かせない。このため、各宗派に伝わる礼法や、仏像などに残されている姿をよく観察し、その感性を共有しておく必要がある。
職人や農業における身体の使い方も、意念や意識の入り込む余地がなく、有無を言わせずその姿である。

 凛学によれば、この世界は「人心同天地、血脈似日月」とある。
天地人はいわば垂直観であり、からだの日月は水平観である、日月により周期が発生する。
これまでうかつにも見逃していたが、羅天の最後にある阿修羅のポーズをよく見ると、中段の手は日月を表しているという。
日月の拮抗から旋回が発生するのではないだろうか?

 凛道の根幹は脳幹を鍛え、生命力を発現することである。
形を正確に覚え、「型」の手順と動作を身に着け、大周天を常態とすれば、身体は尽きることのない衛気によって守られる。
社会全体がはつらつとした姿を失いつつある今こそ、凛道を丁寧に学ぶことの意義は増しているのではないだろうか?
 凛道の気功研究は、九州大学医学部の矢山利彦教授に負うところが大きいのは先に書いたとおりである。
ともすれば、意念さらには妄想に陥りやすいこの修行を小周天バンドによって外界に向けたことは大転換点であった。
これによって羅天は不練自練、そして不練周天の型となった。
第三の目を開き、周天の流れに意を向け、機を観て身を任せれば、尽きることない衛気が養われる。
今こそ、心して稽古すべき時である。


矢山先生からは八卦掌に由来する形も学び、それは凛道では龍相としてまとめられている。
河北一帯の形意拳は槍術由来のためか遠距離の直進的攻撃性が強く男性的、近間での攻防自在の白鶴詠春拳は女性的、
これらと対比すると、八卦掌は両性具有といえる。
これは創始者の蕫海川が後宮を活躍の場とする宦官であったことと無縁ではあるまい。
意表を突き、理解不能な動きを見せる八卦掌の高級技法である龍相も味わいつくしたいものである。
龍相は第二段階では手の位置を中心にして、身体のほうを旋回させる。また第三段階では固め技に対応する稽古をする。
そこまで練ると中心を取ることができるようになる。
また八卦掌で用いられる気は仙骨から命門、中門、大椎、脳戸、百会に上る気であり、
任脈を通って下げる気を十分習得してからでないと実習できないので焦りは禁物である。

 なお、男性的、女性的というのは単に生物学的な性別のことを言うのではない。
今風に言えばジェンダーであろうか?「型」や技術に含まれている男性性や女性性のことであり、
ひとによってはその両方を自在に発揮できる方もある。この傾向を把握するのも自分自身である。

猛暑が続くが、このように深度の深い稽古をしていると、その深淵の深さ、静けさに戦慄を覚え、この上ない「避暑」になるかもしれない、呵呵大笑!


次回(2020年11月号)に続く



●凛道実技紹介<第26回>

今回も武密功を紹介します。
武密功は他派では基本稽古に相当します。以下の順に練功を行ないます。

「順気 突手 打手 裏手 侵手 径手 雲手 蹴り 貫気」


【打手】

いわゆる手刀打ちになります。
平行立ちから左手を腰に引き、右手を額の斜め上に構えます。
そして右手で正中に向かい、手刀打ちをします。
次に右手を腰に引き、左手を額の斜め上に構えます。
そして左手で正中に向かい、手刀打ちをします。
「打手」も「突手」の時と同じように、ゆっくりと動き始め、打つ寸前から早くなるようにします。

打つ方の手を、額の斜め上に構えたところから、正中線に向けて手刀を打っていきます。
これを左右交互に数回繰り返します

打手   


次の打手は、体の前に両手でボールを回すようにして、
右手は上・左手は下の形から右手で目の高さくらいに内から外への打手(手刀)を行ないます。
これも最初はゆっくり打ち出し、最後の方(当たる瞬間)が早くなるよう打ちます。

再び体の前でボールを描きますが、今度は左手が上・右手が下の形になります。
そして右の打ち手と同じ要領で、内から外へ左手のうちを数回行います。

打手   


身体の前で円を描きながら、内から外へ目の高さ位に手刀を打ちます。数回繰り返します  




【裏手】  

軽く膝を曲げ、両腕は脱力して下げ両手甲を合わせます。
<膝が伸びるとき>に両手甲を合わせた腕が内側から上がっていき、
「シッ」と息を吐きながら両手の拳を握ります。
この動作を数回行います。
最初はゆっくりと動き出していき、拳を握る寸前から早くなるようにします。

裏手 


同じ平行立ちから、顔の前で両手甲を合わせます。
今度は立った状態から<膝が少し曲がったとき>に「シッ」と吐きながら、
両手を前面から横に開いて拳を握ります。
拳を握った時は手の甲が上を向いています。
これも動きはじめはゆっくり、拳を握る寸前から早くなるように数回行ないます。 

裏手 




【侵手】

平行立ちで「順気」のときのように、手の力を抜いて両前腕を上げます。
両膝が曲がるときに「シッ」と吐きながら腕を前に出していき、両手指先を前に突き出します。

 要点は
①まず<胸が先に>動きます。手が先に動くのではありません。
②<指先についている水滴を飛ばすイメージ>で突き出します。これも数回行ないます。

侵手  




「裏手」や「侵手」などの功は、
凛道宗師・廣川先生が糸東流開祖・摩文仁賢和先生から「クンシー」と教わったとのことです。 
・・・「クン」は息を吸う音を表し、「シー」は吐く音を表してます・・・


<次回も武密功(その3)です>



「あおさんブラブラ歩(ある)記」7回目・中華圏編①(小嶋・記)

今回より5~6回、中華圏編の予定です。
北は内モンゴル~南は香港・マカオまで、東は上海~西は成都・昆明まで、
台湾も含めて12回渡航した中から、あえて「カンフーおたくが行く」をテーマに絞ります。
世界的なコロナ騒動もあり中華圏は渡航がご無沙汰で、
特に中国本土の分は写真も話題も<相当な昔>が大半ですが、ご了承の上でご覧下さい。


◎中原(開封・鄭州・洛陽と少林寺) 

 今を去ることに二十数年前、初めて中国大陸(旧上海空港)に降り立った日に遡ります。
建てているのか潰しているのか分からない過渡期の上海を観光後、上海駅から空調が無い蒸し暑い寝台車で開封へ。
ここ中原地区は「中原に鹿を遂う」といわれ、古代・中世と中国の都だったので、遺跡や名所に事欠かない地域です。

開封駅を出てすぐに「少林寺武術学校」の案内所(!?)があり、テンションも上がります。
開封では相国寺(京都の相国寺と関係あり)の向かいにあったデパートで、格安(日本円で100円位)の布底カンフー靴が売っていたのですが、
道中どこにでもこの値段であるだろうとスルー。しかし他所で見つからなかったので、何足か買っとけばと後悔しました。


開封駅前の少林寺武術学校の案内所?

相国寺前の布底カンフー靴のあったデパート


開封で朝の散歩に出ると、いきなり太極拳のグループに遭遇。
早速参加し、教練の先生や生徒さんの写真も撮らせてもらいました。
指導されている教練(指導者)の方は、手取り足取り丁寧に指導して下さるのですが、言葉がさっぱり分からない・・。
ホテルで同室だった方は中国語が少し分かるそうで、通訳をしてもらうものの、やはり意思疎通するには自分で勉強しなければと思いました。
皆さん今もお元気にされているでしょうか。


開封にて、太極拳のグループに参加

女性教練の先生と生徒さんの剣の演武


女性教練の先生と剣で対決(!?)

教練の先生お二人が剣の演武

 杜甫生誕の地、石窟寺、龍門石窟、関羽の首を祀った関林堂、白馬寺、フォバークラフトに乗る黄河遊覧区、
数多の遺跡巡り・・・など観光の道中に、中国武術のメッカ「嵩山少林寺」へ立ち寄りました。


 
ついにあの嵩山少林寺の山門に足を踏み入れた。が、観光地化が進んでいたため感激はイマイチ


日本少林寺拳法開祖の来訪の碑

門前は土産店が並ぶ

歴代の僧が眠る塔林


ジェット・リー(李連傑)主演の「少林寺」が上映されてから、この時すでに十数年が過ぎており、
観光地化が進んでいたので、武術の聖地というイメージは薄かったように思います。
有名な僧たちの練武する壁絵や、映画で「ハッ、ハッ、ハハッ」の掛け声で地を踏みしめて(震脚)できた地面の窪みを拝見するも、
これらは残念ながら撮影禁止でした(少林僧がイスに座って睨みを利かし監視!)。

 土産店では、稽古する少林僧の(コメントの難しい?)絵が描かれたTシャツや人形などとともに、
百科事典サイズの「中国少林武術大全」上下巻を購入。
少林拳の形や練功法、経絡など多岐にわたる充実した内容のようですが、残念ながら中国語なので、いまだに眺めるだけです。

後で少林寺近くの武術学校にも立ち寄り、小一時間演武を拝見しました。

 
土産店で買ったもの。Tシャツの絵がなんかチープ

見学に行った武術学校

    
武術学校で生徒の演武を拝見。演武後、小坊主(子供の学生)が打ち身用の薬をセールスしてました 


道中、遠くない所にある(と言ってもバスで2~3時間は掛かるらしい)【太極拳発祥の地・陳家溝】に、
通るだけでいいから行きたい、と私が無茶振りしていたこともあり(!?) 、現地ガイドさんの計らいで、
たまたま鄭州で同じホテルに宿泊されていた「陳家溝の太極拳四傑」のお一人を紹介され、ご挨拶と写真撮影をしました。
大変著名な老師であり、許可をいただいてないので、ここでの掲載は控えます。

洛陽に宿泊の時、同室の方が出張マッサージを依頼し、大柄な師匠格の人とお弟子さんらしき人が部屋に来ました。
最初、師匠格の人はお弟子さんのマッサージの様子をチェックしてましたが、
手持ちぶさたになったのか、机に置いておいた「中国少林武術大全」を手に取り熱心に見ていらしたので、
武術がお好きなのかなと思い、筆談と身振り手振りで尋ねてみました。
羅漢拳をされているそうで、そのうちに武術談義が始まりました。
立禅(站樁)の話題のときは「身体の中を気が回るイメージで練功されてるのですか?」と絵をかいて尋ねると、
「いや、(気を)上から下に落とすイメージだ」と絵を描いて身振り手振りで説明されました。
このときも中国語が話せたらもっと楽しいだろうなぁ、と思いました。


鄭州でマッサージをうけた店の前で。
上記の出張マッサージの話とは全く関連ありません 

*次回は西安の予定です (続)




<凛塾行事予定>
行事予定など決まりましたら後日こちらでお知らせします。

<次号予定>
・各会員レポート 
・入江師範の「武術雑感」(第23回)
・凛道実技紹介(第27回)「武密功・その3」」
(あくまで予定ですので変更の可能性あり

★次回の更新は2020年11月1日の予定です★

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